アスペルガ-症候群
病気の特徴は?
アスペルガ-症候群は
- 他者への共感の欠如に代表される社会性の欠如
- 言語の遅れがないにも関らず、奇妙な発語内容、冗談を理解できない、不適切なジェスチャ-に代表されるコミュニケ-ションの異常
- 想像力の障害による行動の障害
- 興味や関心の著しい偏り
- 不器用さに代表される協調運動の異常
を特徴にもつ知的障害を伴わない広範性発達障害の一群です。
幼児期から対人、社会性の障害が現れ小児科を受診することが多いものの事例化が遅れると学校や職場での不適応を契機に一般精神科を初診することが稀ならずあります。
アスペルガ-症候群の有病率は人口1万人あたり0.3-0.4程と推定され男女比は2:1と男児に多いと報告されています。
成年期に達したアスペルガ-症候群者は、強迫性障害、うつ病、などの精神障害を合併や、さまざまな行為障害を伴いやすいことが報告されています。
病気の原因は?
現在のところアスペルガ-症候群の原因は解明されていません。
アスペルガ-症候群者における自閉症スペクトラムの家族歴の頻度が6-10% に及ぶことから多因子遺伝を素因として、大脳の形態や機能に影響を及ぼす胎生期から周産期までの後天的要因など多要因が重なり発症すると考えられます。
診断に必要な検査は?
アスペルガ-症候群に特徴的な認知プロフィールを把握し診断補助とする目的で標準化された知能検査や作業能力検査が行われます。
知識や過去に学習された能力を測定するウェクスラ-成人知能検査においてアスペルガ-症候群者は動作性IQに比して言語性IQの得点が高い傾向を示します。
また、抽象的推論能力や新奇な問題に対する解決能力を測定する Raven Progressive Matrices test 成績は健常者と比して寧ろ高い得点を獲得されたと報告されています。
有効な治療法は?
アスペルガ-症候群の中核症状に対する根治術は存在しません。
- 本人と周囲へ疾患の理解を促し社会的交流が円滑となるよう支援していく
- 併存する精神障害、精神症状への薬物治療、が治療の二本柱とされています
前者に関しては、社会性やコミュニケ-ションに障害を持つ疾患特性に焦点をあて、騒音、照明、ほかの過剰な感覚刺激を避ける、病者の長所や課題の達成をきちんと評価し肯定的なフィ-ドバックを与える、指示や約束は簡潔なセンテンスで、数値化できるものは数値化して明示する、などの配慮が望まれます。
後者に関しては、抑うつ、不安、強迫、攻撃性、など個々に発現する症状毎に、抗うつ薬、(少量の)抗精神病薬、抗てんかん薬、を投薬する試みがなされています。
注意欠如多動性障害(attention deficit/hyperactivity disorder : ADHD)
病気の特徴は?
注意欠如多動性障害は、学童期までに発病し形を変えても成人期まで持続する
- 多動
- 衝動性
- 不注意
から成る3つの主症状を備える精神障害です。
「いつも落ち着きがない」「気が散りやすく集中することが苦手」「綿密な計画を立てず思いつきで行動を始めてしまう」「お天気屋で気分の変動が激しい」「行間を読めない、惻隠の情を持ち合わせない、人の話を長く聞けない」「飽き易い、一つの仕事や勉強が長続きしない」などの表徴を呈します。
有病率は小児では 4-12%, 成人では5%弱であり、男女比は2.45:1と男性に有意に多いとされます。
追跡調査によれば加齢に伴い
- 性差が縮小
- 症状は減少
の傾向が報告されています。
一方で、成人期に至っても完全には症状が消失せず社会的不適応を起こしやすいこと、アルコ-ル依存、うつ病、不安障害、などの精神障害を併存する危険が一般人口と比べて高いことが明らかになっています。
病気の原因は?
注意欠如多動性障害は家系内発症が多く、ドーパミン神経系機能に関る遺伝子が発症の危険因子に想定されています。
遺伝的要因に妊娠時の母親の喫煙や周産期異常などの環境要因が複合して発症リスクを高めると考えられます。
診断に必要な検査は?
注意欠如多動性障害に特徴的な認知プロフィールを把握し診断補助とする目的で標準化された知能検査や作業能力検査が行われます。
知識や過去に学習された能力を測定するウェクスラ-成人知能検査において注意欠如多動性障害は群指数中で「処理速度」得点の低さ、次いで「作動記憶」得点が低い、パタ-ンを示すことが報告されています。
有効な治療法は?
成人の注意欠如性障害に対し薬物療法と心理社会的治療を組み合わせることで相補的に治療効果が高まることが判明しています。
我が国で成人期注意欠如多動性障害の適応を持つ薬剤は、メチルフェニデ-ト徐放剤とアトモキセチンの2剤があります。
メチルフェニデ-トは主に前頭葉でド-パミンとノルアドレナリン濃度を上げることで不注意症状を改善させる機序が想定されています。
アトモキセチンは選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬ですが前頭前野でノルアドレナリンだけでなくド-パミンも増加させる働きを持つことが報告されています。
成人の注意欠如性障害に対しする心理社会的治療としては、「仕事や学業を集中力が持続する時間毎に細分化する」「取り組むべき仕事や学業を事前にリスト化してどれから取り掛かるべきか検討する」「複雑な課題については、口頭指示(聴覚刺激)だけでなく図表を用いて視覚刺激を組み合わせる」などの配慮を加えることで機能障害を補い併存する不安や抑うつなどの精神症状の軽減に寄与することが期待されています。